「まちづくり幻想」と「地方再生」

間違った土台の上に、どんな膨大な経営資源を投入しても確実に失敗します。

令和4年度 3月定例会 3月1日 田代勝久の一般質問 〜 市長答弁つき 

一般質問

 

2番、みやこ未来創造クラブ、田代勝久です。

3月定例会議の一般質問に際し、本市の諸課題とその解決策に対する市長の認識を伺いたいと考え、壇上から質問いたします。今回4項目を事前に通告しておりますが、いずれも本市の現状に対する私の強い危機感から発するものです。順番に質問いたします。

 

まず1つ目は、EBPMについて、です。

EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)とは、その場限りのエピソードに頼るのではなく、目的を明確化した上で、合理的根拠に基づき政策を企画・立案することです。政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や、統計等のデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、市民の行政への信頼確保にもつながります。

 技術の進歩により、機械の計算能力は指数・関数的に高まっていて、EBPMとテクノロジーを掛け算することで、その効果は飛躍的に高まると考えられ、既存の産業の生産性を飛躍的に向上させることも夢では無くなりつつあります。

そこで、本市における政策の企画・立案は、証拠に基づいたものになっているか伺います。また、できるだけ早い時期にEBPMの考え方や、手法を導入するべきと考えますが、市長の見解を伺います。

 

市長答弁

EBPMについてのご質問にお答えいたします。

議員ご承知のとおり、EBPMとは、「政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、目的を明確化したうえで、合理的根拠に基づくものとすること」と定義されております。

近年、国や地方公共団体においても、統計情報や各種データを用い、合理的な根拠に基づく政策立案と、政策効果の測定が行われ始めています。

本市におきましても、政策立案にあたっては、主観による思い込みで行うのではなく、現状を把握し、目的、目標を明確にしたうえで政策形成及び、実施につなげるよう取り組んでいます。

特に、スタート段階となる現状把握にあたっては、統計情報、市場調査、聞き取りなどにより、問題の状況や要因を明確化し、適切な成果指標が設定できるよう取り組みを進めています。

また、EBPMに関係する取り組みとして、総合計画に掲げる施策、基本事業について、目標に対する成果及び達成度を明らかにするために、全庁において行政調査を実施しております。評価の流れといたしましては、前年度事業の実績確定後、全ての施策等に対し評価を行い、その結果を、翌年度の総合計画実施計画や予算編成に反映させております。事業進捗にあたっては、政策を立案する「PLAN」、実施する「DO」、評価を行う「CHECK」、改善する「ACTION」のPDCAのサイクルにより行っております。

また、PDCAを徹底し、行政評価の成果を高められるよう、職員の勉強会を行うなど能力開発を進めています。

EBPMにつきましても、職員の理解と手法の浸透をはかるよう、この3月に研修を行います。

職員個々の政策形成能力の向上には、論理的思考と適切な成果指標の設定による評価能力の実装が不可欠です。

今後におきましては、EBPMの要素も取り入れた現在の行政評価の手法を基本とし、より職員の政策立案能力を高め、市民への説明責任を果たしてまいります。

 

2つ目は、産業振興政策における規制緩和について、です。

本市の産業構造について分析すると、「これでは誰がやってもお金にならない構造になっているな」というボトルネック(制約条件)が散見され、それらの存在が産業の発展を妨げていると考えます。

本市の産業振興のため、以下の点について市長の見解を伺います。

① 末広町商店街は、駅前と同様に本市の顔です。新規出店数を増やすことが、商店街の賑わい創出に繋がると考えますが、家賃が高額なことがボトルネックとなり、商店街でのビジネス参入への「障壁」となっています。「公共の福祉」の観点から、「財産権」による制約を本市の事情や特性に合った形にデザインし、商店街でビジネスにチャレンジしたいスタートアップに対して参入を促す公共政策を実施することは可能でしょうか。

② 本市にある事業所の資金調達の方法にはバリエーションが少なく、その多くは補助金の「救済」がなければ、事業としての成立が難しいと考えます。市は現在、市内事業所の資金調達の可能性を広げるため、可能な支援を検討しているのでしょうか。

③ 以上のような課題解決のためには、専門家の知見が必要であると考えます。できるだけ早期に関係者と対話し、ボトルネック解消のため、専門家の知見や分析を求めるべきと考えるがどうでしょうか。

 

市長答弁

産業振興政策における規制緩和についてのご質問にお答えします。

はじめに、スタートアップ支援についてのご質問にお答えいたします。

本市では、コロナ禍においても、新規創業の相談が増加する動きが見られて、その要望を踏まえ、令和3年度に商業振興対策事業費補助制度の拡充を行いました。

制度の拡充により、新規創業者に対して、支援を行っております。

なお、新規創業者の事業継続のため、宮古商工会議所や市内金融機関と連携し、経営コンサルタントの支援や創業者同志の情報交換会の開催時、創業後のフォローアップもおこなっております。

次に、資金調達の支援についてのご質問にお答えします。

事業者個々の経営は、経営計画に基づき、基本的には自己資金や融資を活用し、自由な競争のもとで行われるべきものと考えます。

また、地域の経済動向や顧客・取引先の変化に応じた戦略をもち、常に改善し展開されることが望ましい姿であると考えております。

本市では新規創業者向けの家賃支援や事業拡大の経費支援を含む商業振興対策事業費補助制度のほか、資金調達の支援として、中小企業振興資金利補助金制度を用意しております。

また、新たな事業にチャレンジする産業振興補助金、販路開拓や拡大の際は、展示会等出展者支援補助金の制度もご活用いただいております。

今後も、事業者や新規創業者、新規出店者などの声に耳を傾けて、国や県の支援策も紹介しながら、関係機関と連携し、支援を強化してまいります。

次に、事業者の課題解決に向けた専門家の活用についてのご質問にお答えいたします。

議員ご提案の通り、事業者のスタートアップや資金調達等の課題解決のため、専門家の知見や分析を求めることは、事業経営上、重要なことだと認識しております。

宮古商工会議所では中小企業診断士などの専門家を招いて個別経営相談を開催し、経営計画などに踏み込んで、経営改善や設備導入に向けた支援制度の紹介のアドバイスを行なっております。

令和4年度は2月16日現在で、事業計画策定・経営改善等個別支援が123件、融資相談が32件、物価高騰・感染症対応等に係る相談が954件、計119件の相談に応じたと伺っております。

今後はさらに、関係機関と連携しながら、事業者の事業継続を見守り、事業者へ寄り添った伴走型の支援を行ってまいります。

 

3つ目は、若い世代の意見をまちづくりに取り入れていく取り組みについて、です。 

私は市議会のなかでは、インターネットやスマートフォンタブレット、パソコンといった電子機器などのテクノロジーに対する親和性が高い方の人間であると考えていますが、それはある意味当然です。なぜなら、私はこの議会の中では若いからです。宮古市議会議員の中では3番目に若い。

新しいテクノロジーへの親和性は、一般に年齢が若いほど高く、生まれた時からインターネットや電子機器が身近にある、いわゆる「デジタルネイティブ」の世代は、私よりももっとデジタル技術を上手く使って、豊かなデジタルライフを送っています。スマートフォン、ノートパソコンをカフェに持ち込んで作業したり、動画を見たり、SNSで誰かとコミュニケーションを取ったり、「グーグル先生」などと呼んで検索エンジンで調べ物をしたり。今や本市でも日常生活でごく普通に目にするようになった光景です。10代後半から30代までの若年層は、これらの技術を駆使して情報収集を行い、新しい価値観や意見を確立しています。

市の広聴活動にあたっては、こうした若者に対して、SNS等を利用して働きかけ、商店街振興といった市の諸課題に対するアイディアを広く求め、関係者、専門家を交えて、知見を得ながら、課題解決出来る仕組み作りを勧めて行く場が必要だと考えます。市長の見解を伺います。

 

市長答弁

若い世代の意見をまちづくりに取り入れていく取り組みについてのご質問にお答えいたします。

本市では、自治基本条例及び総合計画に基づき、まちづくりへの市民参画と協働を推進しております。

若い世代への働きかけでは、高校生に対し市長講和による地域課題の共有、探求の時間を活用した市職員による講義を行なっています。

そのほか、みやこ未来議会、市のプロモーション冊子の作成、ウェブサイトの構築など、多方面で若い世代への働きかけを強めている途上です。

SNSの利用状況は、年々増加傾向にあります。

総務省の「令和3年通信利用動向調査」によるSNS利用率は、13歳から19歳が90.7%、20歳から29歳が93.2%と、若年層で非常に高い割合であることが公表されています。

昨年12月に行なった市民意識調査では、これまでの郵送調査に加えて、SNSで周知を行い、インターネットによる公開調査を実施いたしました。

その結果、インターネットを経由した回答のうち、10代から20代の回答者は23名であり、有効な取り組みであったと評価しています。

このことから、若い世代への情報発信ツールとして、SNSは欠かすことのできないメディアであるものと捉えています。

これまで本市のSNSによる情報発信は、市公式FacebookInstagram、Lineを活用し、イベント情報・季節の話題のほか、市の取り組みを発信してきました。

一方で、昨年11月のみやこ未来議会においては、高校生自身によるアンケート結果が紹介され、市のSNSの情報発信が十分に認知されていない結果に、我々も認識を新たにいたしました。

まちづくりを進めるうえで、将来を担う若い世代の参画は必要不可欠です。

令和5年度においては、若い世代のまちづくりへの参画を目的に、バーチャル組織「高校生まちづくり課」を創設いたします。

高校生や若者による課題解決や、未来に向けた取り組みの場として、まちづくりに若い世代の力を積極的に取り入れてまいります。

SNSの特徴を生かした情報発信を強め、若者自らがまちづくりに参画することで、宮古市への愛着度の向上を目指してまいります。

若い世代を始め、市民の皆様からいただいたご意見・ご提言は、審議会や協議会において議論を交わし、まちづくりにおける課題解決と市政運営に生かしてまいります。

 

4つ目は、日本の余力と市の財政状況及び政策順位について、です。

現在本市は、財政のかなりの割合を国に依存していますが、本市に限らず、地方自治体の多くは依存財源に頼っているのが現状です。本市は一般財源における依存財源の割合が80%弱に達しており、財政調整基金は約60億円保有しているとはいえ、芳しくない財政状況と言えます。ところが全国を見渡すと、そんな本市が目立たないくらい、他の多くの自治体もまた苦しい財政状況です。

これまで、日本における地方財政は「三割自治」と揶揄されるように、日本の地方自治体は 総税収に占める地方税の割合が3割程度しかない、あるいは、地方における総収入に占める地方税の割合が3割程度しかないという意味で「三割自治」と表現され、日本の地方自治体の自主性の欠如を示す言葉として使われ続けてきました。しかし令和時代の現在は、「三割自治」どころか、本市の一般財源においては「二割自治」です。この一点だけ考えても、本来なら危機感を感じなければおかしいと私は考えます。

そこで日本の余力と、市の財政状況、政策に関する市長の見解について、次のことを伺います。

① 現在の日本の財政的余力と、市財政に占める国の財源の比率をどう認識しているでしょうか。数値と評価をお示しください。現時点では日本円に価値があるため、金額の単位は円でお願いいたします。

② もし日本に十分な余力があるなら現状維持でも良いですが、日本には余力がないのだとすると、市もそれを前提に政策を選択する必要があります。地方公共団体が最も優先して行うべき公共政策は、市民生活に欠かせない食料、水、燃料といったインフラを構築し、途切れず存続させるという広義の「危機管理」だと考えますが、市長の政策の優先順位はどうでしょうか。

 

市長答弁

「日本の余力と市の財政状況及び政策順位について」のご質問にお答えします。

現在開会中の通常国会において、鈴木財務大臣による財政演説が、去る1月23日に行われました。

この中で『財政は、国の信頼の礎であり、日本の信用や国民生活が損なわれないようにするため、財政余力を確保しておくことが不可欠である』との認識を示されました。

また『2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標の達成に向けて、歳出・歳入両面での改革を着実に進めていく』旨が述べられております。

国の一般会計当初予算におけるプライマリーバランスは、令和3年度では△20兆3617億円、令和4年度は△13兆462億円でありました。

令和5年度の予算案では△10兆7613億円となり、改善傾向が見られるなど、財政の健全化に向けた動きが窺われる状況となっております。

財政演説では『経済あっての財政との方針に沿って、経済の再生と財政健全化の両立を図ることが重要である。』とも述べており、その両立が図られていくものと認識しております。

本市の財政状況については、令和5年度一般会計当初予算案に占める自主財源は、105億6925万8千円で、率にして、31.7%となっています。

依存財源は、228億9874万8千円で、率にして68.3%となっています。

依存財源の主なものとしては、地方交付税113億6千万円、率にして34%が挙げられます。

地方交付税は、どの地域に住む国民にも一定の行政サービスが提供できるよう財源を補償するために、法に基づき国から交付されるものであり、地方の固有財源とされています。また、国庫及び県支出金は、合わせて39億5666万円、率にして11.8%となっています。

これらのことから、依存財源が68.3%であることが、本市の財政の安定性を損ねているとは考えておりません。

また、その一方で、自主財源の確保が課題であるとも認識しております。

ふるさと納税、企業版ふるさと納税、市広報物への広告掲載や公共施設へのネーミングライツなどにより、自主財源の確保に積極的に取り組んでまいります。

次に、公共団体が最も優先して行うべき公共政策についてのご質問にお答えします。

私たちは、先人たちが英知とたゆまぬ営みによって築いてきた歴史と文化を引き継ぎ、今、このように日々の生活を送らせていただいております。

そのうえで、市民の生命、財産を守り、この宮古市を次代につ投げていくことが、私たちが実現を目指す「持続可能なまち」であるものと考えます。

議員ご質問の、食料、水、燃料などは、市民生活に必要不可欠なライフラインであります。平時有事を問わず、供給体制や設備は最優先で維持していかなければなりません。

本市では、「食育及び地産地消の推進基本条例」や「水道水源保護条例」のほか各種計画によりライフラインを守り、一層の強靭化を進めることとして取り組んでいます。

また、今議会には、再生可能エネルギーの導入と地産地消を推進する「再生可能エネルギー推進条例」を提案致しております。

各種強靭化への取り組みは、東日本大震災からの大きな教訓でもあり、広義の危機管理の一環であります。

これらの市民生活を支える都市基盤のうえに、各種施策の展開を図っているものです。

先の経営方針でもお示しいたしましたとおり、令和5年度の方針として、優先する5つの重点事項を挙げさせていただいております。

再生可能エネルギーの推進によるエネルギー自給率の向上や、食料自給率の向上を目指す産業振興策の推進などについて、項目毎に具体的な取り組みをお示ししております。

本市のまちづくりは、各地域の特性を生かし、中長期的な財政への影響も考慮しながら進めております。

しかしながら現代においては、災害や新たな感染症の流行など、市民生活への大きな影響を与える災禍も発生します。

突発事案への対応については、これまで同様に的確に議会へのご説明し対応をしてまいります。

今後におきましても、エビデンスに基づき、実効性のある施策の推進に取り組んでまいります。

 

 質問項目は以上になりますが…

 

私が言いたいのは、もはや「全体を見た話」にしなければならない、ということです。経営学者として世界的に有名な「マネジメント」を著したピーター・ドラッカーは、「全体最適」ということを言っています。言い方を変えれば、「ゼロベース」で最適解を模索し、それを社会実装 するということを考えるタイミングに来ているのだ、ということなのです。これは元々は仏教の教えにルーツがあり、近江商人が商売の時に心がけていたという「三方良し」という思想に似ているのかもしれません。これを本市の山本市長が常々言っているように「誰一人取り残さない」ように包摂すること、そのための余力を確保するための武器、ツール、ノウハウ等を持つこと、それを私は「全体最適」東洋風にいうなら「三方良し」を実現するための必要条件と考えます。

 

テクノロジーが進歩すれば、社会の有り様の最適解が変わります。我々は既存の経年劣化した「重たい社会基盤」を、アップデート、アップグレード、バージョンアップして、令和の新しい社会を、便利で簡単な、そしてより豊かな社会にしていかなければなりません。

「テクノロジーを使い倒せ!!」これは「イシューからはじめよ」の著者で、YahooCSO、慶應大学SFC教授、データサイエンス協会理事である安宅和人さんの言葉です。日常的な仕事などで「機械」にできることはどんどん駆使してパワーアップすべきです。ハックとは、うまくやり抜くためのアイデアやコツであり、個人にとってテクノロジーはハックするためのパワードスーツに近いと考えます。「昔は部下とかにやらせていたことを、自分と機械でできることが多くなった」テクノロジーを使い倒しているトップランナー達からは、そんな声も聞こえてきます。

 

今の日本の政治や社会は、若者の政治参加や選挙に行くと言った生ぬるい行動で変わるような、そんな甘っちょろい状況にはありません。革命を100とすれば、選挙に行くとか議員になるというのは、現実的にはせいぜい1とか5とかそのくらいの程度のことです。現在の日本は、「経年劣化した古くて重たい社会基盤」を未だに採用し続けているせいで、数十年びくともしない慢性の停滞と危機に陥っており、それをひっくり返すのは錆び付いて沈みゆく昭和の豪華客船を水中から引き揚げるような大事業となっています。最優先すべき目前の危機に対して盲目的で、日々の生活や楽しいことを優先してしまう。そんな一般庶民の様を、猪瀬直樹さんは「ディズニーランドの住人」と揶揄しました。そろそろ本当の恐怖に気づくべき時なのではないでしょうか。

 

 特に市民の生活を預かる市長や、公共の福祉に奉仕する職員の皆さんには、この危機を自覚していただき、ともに対策を考えていただきたいと思っております。

 

 以上で壇上での質問を終わります。なお、再質問がある場合、自席から行わせていただきます。