「まちづくり幻想」と「地方再生」

間違った土台の上に、どんな膨大な経営資源を投入しても確実に失敗します。

令和5年度 三月定例会 田代勝久の一般質問通告内容と市長答弁

今回は質問通告の内容と質問に対する市長答弁を掲載します。

 

1 番目は末広町の商店街振興についてです。

 

市長は「宮古市経営方針」の中で、「賑わいある中心市街地の形成」を重点事項に掲げ、末広町の無電柱化が令和6年度に完了すると説明した。本市では末広町の商店街振興について、無電柱化を進めるなど、補助制度を活用した多額の投資を行ってきた。しかし「賑わい」を創出するための一連の戦略性がなかなか見えず、特に一部市民は、今後の商店街振興政策の有効性に大きな疑念を抱いている。そこで次の点について、市長の見解を伺う。

 

①無電柱化工事は商店街振興策という「目的」のための「手段」であったはずである。しかし一部の市民からは、「工事が目的化しているのではないか」「本当に必要だったのか」といった疑問の声が出ている。市長は現時点でも、無電柱化工事が商店街振興にとってベストな政策決定であったと考えているか。

 

【市長答弁】

中心市街地の都市計画道路は、平成30年9月策定の宮古市都市計画マスタープランにおいて、三陸沿岸道路や宮古盛岡横断道路等開通後の市街地交通量の大幅な減少予測を背景に、クルマ重視から、歩行者・自転車・公共交通を優先し、まちの賑わいや魅力の創出につながる道路へと方針を転換しました。

この方針のもと、中心市街地の都市計画道路である市道末広町線の無電柱化整備は、平成30年度から令和元年度にかけて整備基本計画を策定し、令和2年度に工事着手を行い、令和6年度内の完成を予定しております。

市道末広町線は、中心市街地の商店街を通り、毎年この通りをメインに祭りが開催されるなど、多くの人で賑わう道路であるほか、緊急輸送道路に指定している重要な道路です。

また、中心市街地には、交通の拠点となる宮古駅があることから、市民をはじめ、多くの観光客が訪れます。

このことから、市道末広町線の無電柱化整備は、安全で快適な歩行空間が確保され、景観や防災性の向上が図られ、ひいては中心市街地における歩行者の回遊性が高まり、賑わいを作り出すものと考えております。

 

②無電柱化工事完了後の商店街振興のための戦略が全く見えない。誰が主導してどのように展開していくのか。

 

【市長答弁】

無電柱化工事完了後の商店街振興の戦略についてのご質問にお答えします。

無電柱化工事完了後の商店街振興については、商店街振興組合を中心とする中心市街地の事業者と、市、宮古商工会議所、岩手県中小企業団体中央会等の関係機関が連係して、取り組みを行っております。

さる2月9日には市主催の「産業支援フォーラム」を開催し、「中心市街地活性化を実現する仕組みづくり」に関する先進事例について学びました。

翌日には、商店街の事業者を中心にワークショップを行い、無電柱化後の中心市街地の魅力づくりのための、今後の具体的な取り組みについて議論が行われました。

その中で、親子連れが集まり休憩できるスペースの検討や、駐車場情報のインターネットでの情報発信、商店街の愛称を募集してはどうか、などの意見が出されたと伺っております。

 

 

③商店街の賑わい創出には、集客力の高い、話題性のある店舗・業種・コンテンツが必要だと考えるが、既存の店舗に対する支援などの有効な対策はあるか。

 

【市長答弁】

 

商店街の賑わい創出に向けた、既存の店舗に対する支援についてのご質問にお答えします。

本市では、商業振興対策事業費補助金により、商店街の既存の商店街振興組合等に対して、賑わいづくりイベントの開催や、情報発信のためのツール作成などの支援を行っております。

無電柱化後に向けては、商店街振興組合の理事会の場において、店舗の改装や商店街の景観づくり等についても話し合われていることから、事業者のニーズに合わせて引き続き取り組みを支援してまいります。

また、情報発信におけるWEBコンテンツとしては、去る2月6日、7日の2日間、「店主のためのSNS勉強会」を商店街振興組合が中心となって開催し、延べ29名の事業者及び支援機関が参加いたしました。

各店舗が、インスタグラムを活用した魅力ある情報発信を強化して、集客拡大に向けて動き出しております。

その他、商店街の魅力発信を担当する宮古市地域おこし協力隊が、店舗動画の作成や、商店街情報誌フリーペーパーの発行、店舗情報やイベント情報のSNS情報発信も実施し、商店街の取り組みを支援しております。

 

④若い世代の経営者による店舗の新規参入の促進について、現状どのように展開しているか。また今後の展望は。

 

【市長答弁】

 

若い世代の経営者による新規参入の促進と、今後の展望についてのご質問にお答えします。

新たに起業・創業する経営者への支援としては、宮古商工会議所と市が共催して「創業スクール」を年2回開講し、経営、財務、人材育成、販路開拓など、創業後に必要なスキルの取得と、実践的な事業計画の策定に向けた支援を行っております。

「創業スクール」には、平成30年度から令和5年度までに、延べ129名の受講者がおり、33名が新規創業を果たしております。

創業後も、専門家による個別相談、創業者のチャレンジショップイベントの「みやこチャレンジマルシェ」や創業者交流会の開催、メーリングリストでの情報交換など、販路の拡大や創業者同士の交流等を支援しており、引き続き取り組んでまいります。

 

⑤「まちの魅力発信の契機となるような取り組み」とあるが、具体的にはどのようなものか。既存のものとは別の新たな試みはあるか。

 

まちの魅力発信の契機となる取り組みについてのご質問にお答えします。

令和4年度には、末広町・中央通り商店街が中小企業庁の「商店街等における課題解決のための専門家派遣及びワークショップ」の採択を受け、商店街の組織、魅力化、情報発信等の課題解決を話し合いました。

ワークショップにおける具体的な提案内容については、今年度も引き続き、毎月の商店街振興組合の理事会等を中心に検討を重ね、新たな歩道空間を活かした、中心市街地の賑わいづくりに向けて取り組むと伺っております。

今後も、中心市街地の関係機関と連携しながら、まちの魅力づくりと発信に向けて、取り組みを強化してまいります。

 

 

2 番目は外国人旅行者の誘致についてです。

 

宮古市経営方針」では、クルーズ船の寄港や「みちのく潮風トレイル」などをきっかけに、外国人旅行者の誘致に取り組むとしている。本市への外国人の誘致に関して、次の点について伺う。

 

①市では、本市を訪れる外国人旅行者の実数は把握しているのか。また外国人の国籍などの属性には傾向があるか。

 

【市長答弁】

 

市では、市内宿泊施設に協力していただき、宿泊した外国人旅行者の国籍や実数の把握を行うとともに、宮古駅前総合案内所への来訪者に対しても、聞き取りによる状況把握を行っております。

本市を訪れた外国人旅行者の国籍や実数の把握を行うとともに、宮古駅前総合観光案内所への来訪者に対しても、聞き取りによる状況の把握を行っております。

本市を訪れた外国人旅行者は、コロナ禍前の令和元年は4060名でしたが、令和5年は4224名となっており、令和元年との比較で4.04%の増加となっております。

また令和5年の外国人旅行者の国籍別上位3カ国は、中国、台湾、アメリカの順になっております。

 

②観光情報サイトやパンフレット等の多言語翻訳には取り組んでいると思うが、実際の外国人旅行者からの感想や意見をどのようにフィードバックしているのか。

 

【市長答弁】

 

市のパンフレットやホームページについては、複数言語に対応して発信しております。

外国人旅行者からの感想や意見については、問い合わせ先として、市観光課のメールアドレスを表記し対応しております。

市観光課や宮古観光文化交流協会では、外国語での問い合わせが届いた際には、多言語対応できる職員が直接対応を行っており、意見などあった場合には関係機関に情報共有することとしております。

 

 

③外国人旅行者が利用する本市への交通アクセスはどのようなものを想定しているか。

 

【市長答弁】

 

宮古観光文化交流協会に聞き取りをしたところ、外国人旅行者については、「多くの方は公共交通機関を利用して本市を訪れている」「主な経由地は盛岡が多く、盛岡からのアクセスは、バス、列車を使う方が多い」と伺っています。

 

④観光客の利便性向上を図る上で、日本人観光客との違いは感じられるか。

 

外国人旅行者は、比較的長期間で旅行をする方が多く、日本人と比べて、比較的旅行スケジュールに余裕があると感じております。

タイトなスケジュールで多くを訪問する、というよりも1箇所に長く滞在し、その地域をしっかりと観光してから、次の目的地を決めて移動する、という方も多くいるように見受けられる。

引き続き、快適な旅となるよう受け入れ体制の整備に努めてまいります。

 

⑤WEBサイトからの誘客を狙った方策として「検索エンジン最適化」(SEO)などが挙げられると思うが、そうした手立ては講じているのか。

 

現在、WEBサイトの「検索エンジン最適化(SEO)」の方策としては、関係機関のホームページとのリンク接続を主に行っております。

宮古市宮古市観光文化協会、浄土ヶ浜ビジターセンター運営協議会、三陸復興国立公園協会等のホームページを相互リンクさせることで、検索エンジンの上位表示を目指して、取り組んでおります。

2月1日にはイギリスのタイムズ紙に「日本で訪れるべき最高の場所14選」の一つとして、「みちのく潮風トレイル」が掲載されました。

また、今年は、宮古港に、昨年の7隻を上回る8隻の外国客船の寄港が予定されております。

今後も、訪日外国人旅行者の増加が見込まれておりますので、その動向を調査し、行動や嗜好の分析も行いながら、さらなる誘客のため、積極的な情報発信を行ってまいります。

 

3 番目は、活力に満ちた産業都市づくりにおける水産業振興政策についてです。

 

市長は「宮古市経営方針」の重点事項として「地域産業の振興」を掲げ、魚類養殖の取組強化について言及している。

本市の産業振興政策のほとんどは実質「救済措置」であり、その投入されたコストに対して本市の「稼ぐ力」は、ぱっとしないものと感じられる。

特に水揚げはもはや壊滅的と言わねばならない。陸上養殖をその柱に据えているようだが、その生産量は「宮古トラウトサーモン」で250 トンと微弱であり、天然物の漁獲量を代替できるようなものではない。

 

そこで特区制度を活用し、東証一部上場企業でもあり日本水産マルハニチロのような世界的な規模の水産企業を誘致することを

 

「Demand!」(強く要求)する。

 

市長の見解を伺う。

 

【市長答弁】

 

時事通信社による全国主要32漁港取扱高調査によりますと、令和5年1月から12月までの宮古市魚市場の水揚げ高は、数量は約1万7千トンで全国19位、県内で2位となっております。

水揚げ金額につきましては、約57億4千6百万円で全国22位、県内1位となっております。

宮古市魚市場の水揚げ量は、東日本大震災以降、減少傾向にあり、海洋環境の変化によって水揚げされる魚種に変化が起きていると受け止めております。

水揚げ量の減少につきましては、本市の主要魚種であります、サケやサンマ、タラなどの水揚げ量の減少によるものが大きな要員であります。

一方、マイワシやマダコなどの断水系の魚種は、近年、水揚量が増えており、今後も安定的に宮古市魚市場の水揚げに繋がるよう、かい来船の誘致を進めてまいります。

宮古トラウトサーモン」につきましては、宮古市魚市場の水揚げを補完できる魚種として、令和元年度に、本市が、宮古漁業協同組合に海面養殖調査事業として委託し、第1期の養殖が始まりました。

第2期以降は、宮古漁業協同組合が実施主体となり、徐々に生産量を増やし、第5期目となる令和6年度の水揚げ目標を250トンと市、現在、宮古湾で育成中であります。

大手企業が海面養殖に取り組む場合、大部分を自社の加工原料として養殖することとなり、一貫して取り組んでいるところであります。

本市におきましては、宮古漁業協同組合が、宮古市魚市場への水揚げによる地元への流通を目的とし、一貫して取り組んでいるところであります。

宮古トラウトサーモン」は、全ての数量を宮古市魚市場に水揚げすることにより、買受人を通して市内外の小売店水産加工業者にも広く流通し、水揚げ量を補完するから魚種として、重要性が増してきております。

今後も、事業主体である宮古漁業協同組合と連携し、宮古市魚市場への水揚げ量の増加に向けて、地元漁業者や企業の参入の可能性も含め、増産体制について検討してまいります。