「まちづくり幻想」と「地方再生」

間違った土台の上に、どんな膨大な経営資源を投入しても確実に失敗します。

令和5年 三月定例会 田代勝久・一般質問 冒頭文 一般質問通告文

※冒頭の挨拶が20分を超え、通告の内容と逸脱した話との判断から、議長から通告の3項目の質問に移るよう促されたので、冒頭で試みた話の中で②のイシュードリブンの部分③のモンキーファーストの原則の話を割愛せざるをえませんでした。

冒頭では話を試みると言っていますので、話す予定だった内容は掲載します。悪しからず。

 

2番、みやこ未来創造クラブ、田代勝久です。

3月定例会議の一般質問に際し、本市の諸課題とその解決策に対する市長の認識を伺いたいと考え、壇上から質問いたします。今回は3項目を事前に通告しております。順番に質問いたします。

 

その前に

今回は冒頭に大きく3つのことについてお伝えすることを試みてみたいと思います。

 

①リープフロッグ現象について

②イシュードリブンと木下斉さんの「補助金は当てにするな」という話

③モンキーファーストの原則

 

また、本市に限らず、苦手な方が多数おられるので大変恐縮なのですが、IT用語や外来語などのカタカナを使うことをお許しください。最初にお詫び申し上げます。

 

知らない言葉に出会ったら、どうやって調べるか?

デジタルの技術を使った様々なものが世に流通する以前、私たちは辞書などの「紙媒体」を利用することが多かった気がします。現在は「検索エンジン」を使って調べ物をすることが多くなってきました。

ただ、年配の方々の中には、もしかしたら「検索エンジン」使ったことがない、という方もいらっしゃるかもしれません。正直、「検索エンジン」苦手だなあ、と感じている人も少なくないのかもしれません。

検索エンジン」を使う、などと表現すると、何やら難しく聞こえてしまうのかもしれませんが、実際にそこで行われている動作は、「自分の意図した文字を表示させる」そして検索ボタンを押すことです。

これは最近流行りの「チャットGPT」に代表されるAIが搭載されたチャットボット、生成AIの使い方も、基本的には「検索エンジン」と同様です。

 

つまり、端的にいうと、いかにそこに「自分の意図した文字を認識させる」かが、年配の方々が「検索エンジン」や「チャットGPT」と、まるでご友人と対話しているかのように付き合えるかどうかのカギになっている気がします。



さて、今回一般質問に先立って冒頭にお伝えする内容は、大きく3つでした。

早速、1番目の話題に入りたいと思います。

 

みなさん、リープフロッグ現象(leapfrogging)という言葉、現象をご存知でしょうか?

 

この言葉は、新興国で特定の技術やインフラが先進国よりも速いスピードで整備、浸透する現象を指します¹。この現象は、既存の制度やインフラとの摩擦がないために生じます¹。

 

"leapfrog"は日本でいう「馬跳び」というとしっくりきますが、英語ではフロッグは蛙ですので、リープフロッグは蛙の跳躍に例えています。派生して「追い抜く」「飛び越す」などの意味もあります¹。

 

新興国にある既存の技術やインフラなどが未整備あるいは貧弱な場合、新しい技術が持ち込まれると、先進国がたどったような普及や発展の段階をスキップして一足飛びに最新技術が社会へ浸透することがあります¹。

 

具体的な事例としては、電話回線など有線の通信インフラが貧弱だったアフリカや東南アジアなどに最新規格に対応した携帯電話技術が持ち込まれ、一部の先進国を追い抜く勢いで急速にモバイルデータ通信やスマートフォンが普及した事例がよく知られています¹。これらの国ではモバイル環境を前提とした決済システムや新たなネットサービスが急成長するなど、産業や生活への副次的な影響が見られる場合もあります¹。

 

また、リープフロッグ現象は、本市のような地域においても起こり得る現象です。ある分野で遅れていた地域や企業が、最新技術や方法を導入することで、一気に他地域や競合他社を追い抜く現象を指します。この現象は、需要が旺盛であるが、技術的な基盤が未発展であり、かつ規制に縛られない環境で起こりやすいと言われています1。

 

しかし、近年の日本ではリープフロッグ現象が起きにくいと言われています。その理由は何かと言いますと、保守的なビジネス文化や既存システムの堅持を優先し、また規制や法的制約が厳しく、要するに市場が保守的であるということです1。日本は世界的に高度な技術力を持っているにもかかわらず、最先端のIT技術やサービスの導入において他国よりも遅れていることがあります。例えば、UberAirbnbなどは既得権益を守るために規制によってブロックされています12。このことに対しては、若い世代も含め多くの経済学者やIT分野をはじめとする多くの経営者が批判しています。

 

一方、本市の状況は、現状あまり元気がありません。しかし、もし仮に本市でこの「リープフロッグ現象」を起こせたとしたら、意外に早く「稼げるまち」に変わることができるかもしれません。

ただ、もちろん「宮古にリープフロッグ現象を起こせ!」と声高に叫んだだけでは何も起きませんので、我々はより各論的なところに、より具体的なところに話を進めなければなりません。

 

そこで、最近流行りに乗っかって、物知りでいいやつだと評判のチャット GPTと、このテーマについて対話を試みてみました。

 

実は私が使っているのは、Open AI社のチャットGPTではありません。マイクロソフト社のBINGチャットのコパイロットです。 GPT3の500倍の数を処理することができ、指数関数的に進化した最新バージョンのAIである GPT4を搭載しているMicrosoft Bingは現在無料で利用することが可能です。



さて、AIとの対話での語りかけは

「リープフロッグ現象を地方自治体に起こすには 具体的対策」

としてみました。

 

すると、程なくこんな返事が返ってきました。

 

リープフロッグ現象とは、既存の技術を経ることなくいきなり最新の技術に到達する現象を指します1。過疎地域においてリープフロッグ現象を起こすための具体的な対策としては、以下のようなものが考えられます:

  1. 先進技術の導入:過疎地域では、通常のインフラ整備が難しい場合があります。そのため、最新の技術を導入することで、一足飛びに進歩を遂げることが可能です1
  2. 教育と研修:新しい技術を導入するためには、地域住民がその技術を理解し、使いこなせるようになる必要があります。そのための教育や研修の提供が重要となります。
  3. 法制度の整備:新しい技術の導入や利用を円滑に進めるためには、それを支える法制度の整備が必要です1
  4. 公私パートナーシップ:公共機関と民間企業が協力して、新しい技術の導入や普及を進めることも有効です2
  5. 地域間の広域連携:過疎地域間での広域連携を進めることで、リソースを共有し、効率的に新しい技術を導入することが可能になります3

これらの対策は、過疎地域が直面する課題を解決し、地域の発展を促進するための一助となるでしょう。ただし、具体的な対策は地域の特性やニーズに応じて柔軟に考える必要があります。

という対話らしきものが成立しました。

この対話の内容ですが、この冒頭文をはじめ、一般質問通告の内容、市長答弁、再質問からの展開、含め、定例会後、何かしらの形で広報できればと考えています。

1.先進技術の導入についてだけ補足で説明いたしますが、あくまでも「目的」は「課題の解決」であるはずで、そうしますと先進技術の導入に関しては注意が必要です。すなわち技術の導入は、あくまでも「課題解決」の「手段」だということです。「先端技術の導入」にこだわっていると、そのほかの筋のいい「課題解決の方法」を見落としてしまう可能性が高まります。

また、「課題解決」最優先することで、様々な事業の設計を「逆算」で考えることが自然とできるようになります。

実は昨年の三月に、私は紫波町にありますオガールの視察を行いました。視察メニューの一番最初に施設の運営に携わっている〇〇さんが、施設の説明を進めている中で「逆算方式」という言葉を使っていたのが印象的でした。

世の注目を集める際立った公共施設には、この「逆算方式」のような思想、考え方、コンセプト(概念)のようなものがしっかり実装されているのだ、と実感しました。

どうやら「課題解決」にまつわる、この辺りがしっかり整理されてないと、いかなる事業も迷走することになり、得られる成果も乏しいものになってしまいかねないようです。



また、12月定例会にもお話ししましたが、本当の意味で(中長期的に)本市を元気にするためには、我々は本市を「稼げる街」にする必要があります。

 

私がその中で紹介した「まちづくり幻想」の著者の木下斉氏が、自身のYoutubeチャンネルで「稼ぐまちが地方を変える 10の鉄則徹底解説」https://youtube.com/playlist?list=PLSvMfhn7usmIn-xGhbv8lzwMMe1UstNGf&si=8cHTjoRGyDfOoMk8

において、

 

鉄則2として「補助金を当てにするな」としています。

 

しかし一方、本市をはじめ一般に多くの地方自治体は、補助金依存の体質を改善できず、民間企業のような多様な「資金調達」の手法を導入するところまではなかなか到達できません。補助金問題は何やら根の深い、難解な問題のようです。

 

補助金問題を難解にしている理由の一つを私はこう考えました。

「教育」「福祉」「医療」などは、基本的に市民の「幸福」「ウェルビーイング」を目的としています。行政がその「公益性」を設計する際にも、市民の「幸福」の実現や追及が最優先に考慮されている、そんな印象を受けます。議会もそれが市民の要求するところである限りにおいて、最大限その要求に応えるように行動するのはある意味当然と言えます。

 

しかし、これには少なくとも1つの問題が存在します。それは「幸福にはいくらかかるのか?」という問題です。「公共性は高い」が「資本主義」には馴染まない「教育」「福祉」「医療」の分野を今後どのように考えるのか?

 

「教育」は未来への投資ですから、今後起こるであろう雇用の流動化に伴う「リスキリング」も含め、拡充しなければならないことは自明です。

 

しかし、ご存知のように、現在日本の社会保障関連費用は少子高齢化にともない、増加の一途を辿っていて、現状の制度を存続するのは不可能な状況です。効果を維持、または拡大させつつ「コストの低廉化」を考えていかなければならないのは、もはや喫緊の課題といえます。

(ここまでが議場で披露できた部分。あとは通告した質問を読み上げ、市長答弁の流れになりました。とほほ)

私は昨年から、本市の事業は「目的」と「手段」の逆転が起こっているケースが散見される、と指摘しています。解決すべき「課題」がぼやけていて、結果として宮古市の発展に結びついていない事業が多い、という印象です。

 

昨年の3月定例会の一般質問の冒頭で、元マッキンゼーコンサルタントで、ヤフーのエグゼクティブ、データサイエンスの専門家で慶應大学SFC教授の安宅和人さんは「イシューから始めよ!」と言っています。この言葉を表題にした本も著しています。「イシューから始めよ!」は言い換えれば「課題解決を最優先に物事に取り組め!」ということに他なりません。

 

そこで、「商店街振興のイシューとは何か?」という視点から考えた、以下の質問を行います。

 

1 番目は末広町の商店街振興についてです。

 

市長は「宮古市経営方針」の中で、「賑わいある中心市街地の形成」を重点事項に掲げ、末広町の無電柱化が令和6年度に完了すると説明した。本市では末広町の商店街振興について、無電柱化を進めるなど、補助制度を活用した多額の投資を行ってきた。しかし「賑わい」を創出するための一連の戦略性がなかなか見えず、特に一部市民は、今後の商店街振興政策の有効性に大きな疑念を抱いている。そこで次の点について、市長の見解を伺う。

 

①無電柱化工事は商店街振興策という「目的」のための「手段」であったはずである。しかし一部の市民からは、「工事が目的化しているのではないか」「本当に必要だったのか」といった疑問の声が出ている。市長は現時点でも、無電柱化工事が商店街振興にとってベストな政策決定であったと考えているか。

 

②無電柱化工事完了後の商店街振興のための戦略が全く見えない。誰が主導してどのように展開していくのか。

 

③商店街の賑わい創出には、集客力の高い、話題性のある店舗・業種・コンテンツが必要だと考えるが、既存の店舗に対する支援などの有効な対策はあるか。

④若い世代の経営者による店舗の新規参入の促進について、現状どのように展開しているか。また今後の展望は。

 

⑤「まちの魅力発信の契機となるような取り組み」とあるが、具体的にはどのようなものか。既存のものとは別の新たな試みはあるか。



ここで「目的」と「手段」、そして「課題解決」に関わるお話をお伝えしたいと思います。

それが、3番目、冒頭でうまく説明できるかを試みる最後のお話「モンキーファーストの原則」についてです。

この「モンキーファーストの原則」を提唱した人物は明らかになっていますので、お知らせしたいと思います。

その人物の名は「アストロ・テラー」と言います。

エリック・"アストロ"・テラー(Astro Teller)は、1970年5月29日にイギリスのケンブリッジで生まれ、アメリカのイリノイ州エバンストンで育ちました¹。

 

スタンフォード大学コンピュータサイエンスの学士号と記号計算(記号的およびヒューリスティック計算)の修士号を取得し、カーネギーメロン大学人工知能の博士号を取得しました¹。

 

彼はスタンフォード大学で教鞭をとった後、ビジネスエグゼクティブとなり、2010年からはGoogle X(現在はXとなっています)の研究所を指導しています¹。そしてGoogle Xの数々のプロジェクトに参画しています。

 

「エグゼクティブ」とは、主に「企業などの運営・管理に直接携わる経営責任者・執行役員・上級管理職などの幹部」の意味で用いられる表現です。

 

彼は、アルファベットというアメリカの巨大多国籍テクノロジー複合企業の傘下の「X(旧「グーグルX」)」のCEOなど幹部としてその中枢を担い、この巨大な企業体に大きな影響を与え続けています。 

 

「モンキーファーストの原則」は、プロジェクトや事業を進める際に、最も困難な課題(「サルの訓練」)を最初に取り組むという考え方です¹。プロジェクトの成功を確実にするための戦略として注目されています¹。

 

具体的には、プロジェクトのタスクが複数ある場合、その中で最も困難で不確実性が高いタスクを最初に取り組むべきだという考え方です¹。なぜこのような考え方をするのかと言いますと、最も困難なタスクが解決できなければ、他のタスクが完了してもプロジェクト全体としては成功しないからです¹。

 

例えば、「彫刻入りの立派な台座の上で、サルに小説を朗読させる」という事業を考えた場合、タスクは「①サルを訓練して小説を朗読させる」、「②彫刻入りの台座を造る」の2つに分かれます¹。このうち、「①サルを訓練して小説を朗読させる」は非常に困難で、成功するかどうか不確定です。一方、「②彫刻入りの台座を造る」は比較的容易で、成功することがほぼ確定しています¹。この場合、モンキーファーストの原則に従うと、「①サルを訓練して小説を朗読させる」を最初に取り組むべきだ、となるのです¹。

 

この原則は、リソースの無駄遣いを防ぎ、プロジェクトの成功確率を高めるための重要な戦略となります¹。

 

例えば、新しい製品を開発するプロジェクトを考えてみましょう。このプロジェクトでは、新しい技術の開発、マーケティング戦略の策定、製造プロセスの設計など、さまざまなタスクがあります。これらのタスクの中で、「新しい技術の開発」が最も困難で不確実性が高いものだとします。この場合、モンキーファーストの原則に従うと、新しい技術の開発を最初に取り組むべき、となります。新しい技術が開発できなければ、マーケティング戦略を策定したり、製造プロセスを設計したりしても、製品は完成しないからです。

 

この原則を適用することで、プロジェクトの進行状況を明確に把握し、必要な調整を迅速に行うことが可能になります。

 

宮古の観光、水産業振興にとって『サルの訓練』にあたる最初に取り組むべき問題とは何か?という視点から考えた。かの質問を行います。

 

2 番目は外国人旅行者の誘致についてです。

 

宮古市経営方針」では、クルーズ船の寄港や「みちのく潮風トレイル」などをきっかけに、外国人旅行者の誘致に取り組むとしている。本市への外国人の誘致に関して、次の点について伺う。

 

①市では、本市を訪れる外国人旅行者の実数は把握しているのか。また外国人の国籍などの属性には傾向があるか。

 

②観光情報サイトやパンフレット等の多言語翻訳には取り組んでいると思うが、実際の外国人旅行者からの感想や意見をどのようにフィードバックしているのか。

 

③外国人旅行者が利用する本市への交通アクセスはどのようなものを想定しているか。

 

④観光客の利便性向上を図る上で、日本人観光客との違いは感じられるか。

 

⑤WEBサイトからの誘客を狙った方策として「検索エンジン最適化」(SEO)などが挙げられると思うが、そうした手立ては講じているのか。

 

3 番目は、活力に満ちた産業都市づくりにおける水産業振興政策についてです。

 

市長は「宮古市経営方針」の重点事項として「地域産業の振興」を掲げ、魚類養殖の取組強化について言及している。

本市の産業振興政策のほとんどは実質「救済措置」であり、その投入されたコストに対して本市の「稼ぐ力」は、ぱっとしないものと感じられる。

特に水揚げはもはや壊滅的と言わねばならない。陸上養殖をその柱に据えているようだが、その生産量は「宮古トラウトサーモン」で250 トンと微弱であり、天然物の漁獲量を代替できるようなものではない。

 

そこで特区制度を活用し、東証一部上場企業でもあり日本水産マルハニチロのような世界的な規模の水産企業を誘致することを

 

「Demand!」(強く要求)する。

 

市長の見解を伺う。

 

私も皆様のおかげをもちまして、議員生活にもだいぶ慣れてきましたので、今後はさらに対話を通して、これらの課題解決に向けて行動していく、そのような決意を新たにしたところです。

 

以上で壇上での質問を終わります。なお、再質問がある場合、自席から行わせていただきます。

 

※なお、市長答弁、再質問の展開付バージョンは、後日当ブログにて掲載します。

 

終わり